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2026.2.24

制作費を最小に、露出を最大に。出口から考えるコンテンツ戦略

「今月のオウンドメディア更新、どうしよう……」。新しい記事を書くために、真っ白な画面を前に手が止まっていませんか。

企業のマーケティング担当者にとって、コンテンツ制作は常にリソースとの戦いです。担当者が毎回ゼロからリサーチして執筆し、本来注力すべき戦略立案やデータ分析、リードへのアプローチが後回しになる。苦労して記事を作っても検索順位が上がらず、PVも伸びず、営業現場でも使われない。上司からは「もっとリードを獲得しろ」と迫られ、現場からは「専門用語が違う」と突っ込まれる。そんな板挟みの状態で、夜遅くまでキーボードを叩いている方も少なくないはずです。

結論を先に言うと、制作コスト(時間・労力・費用)が異常に高く感じられ、成果が追いつかない最大の原因は「作る時点で出口(最終的なアウトプットの形と使われ方)が決まっていない」ことにあります。流行っているから記事を書く。言われたから動画を撮る。こうした“とりあえず”の積み重ねが、膨大な修正作業と、公開しただけで終わる「使い捨てコンテンツ」を生んでいるのです。

STUDIO WooFoo Inc|品質管理ディレクター K.K

執筆

STUDIO WooFoo Inc|品質管理ディレクター

K.K

制作を捨て、収穫にシフトする

多くのBtoBマーケティング担当者が陥る罠は、「良質なコンテンツは、常にゼロから新しく作らなければならない」という思い込みです。企画をひねり出し、構成案を白紙から作り、関連情報を調べ、一文字ずつ文章を紡ぐ。このフロー型の制作は、どうしても時間が溶けます。しかも、現場の最前線にいないマーケターが想像だけで書くと、内容が表面的になりやすいという問題も抱えています。これは担当者の能力の問題ではなく、情報へのアクセス構造の問題です。

ここで発想を切り替えます。ゼロから「制作」するのではなく、社内にすでに存在している価値ある知恵を「収穫」する。そう捉え直してください。

現場には、そのまま極上のコンテンツになる一次情報が転がっています。トップセールスが商談のクロージングで使う言い回しや反論処理の筋道、開発担当者が語る技術的ブレイクスルーの背景、カスタマーサポートが日々向き合う顧客のリアルな悩みと解決のプロセス。これらは検索しても出てこない、競合がコピーできない“自社固有の資産”です。

収穫の方法はシンプルで、最も手間がかかりません。「本人に話してもらうこと」です。社内向けに1時間の勉強会を開く、あるいは社内の専門家や既存顧客に1時間のインタビューをする。そして録画・録音して残します。

1時間という時間には、想像以上の情報量があります。話した内容を文字にすると、1万5000〜2万文字程度になることが多い。2万文字は、ブログ記事2000文字換算でおよそ10本分に相当します。つまり「毎回ネタを考えて10本書く」よりも、「1時間の一次情報を確保して、10本に展開する」ほうが、コスト面でも質の面でも勝ち筋になりやすいのです。

ここで重要なのは、単なる効率化ではありません。フロー型の労働から、アセット運用型への転換です。一次情報を起点にすると、独自性と専門性が“後から頑張って足すもの”ではなく、“最初から含まれているもの”になります。

コストを最小化する「出口戦略」の設計

ただし、収穫には落とし穴があります。それが「とりあえず録画・録音しておく」という無計画な素材集めです。

目的も構成もなく1時間話した素材は、後工程で必ず手間がかかります。面白い部分や有益な部分を掘り当て、文脈をつなぎ、矛盾を潰し、結論が出るように再構成する。これはプロでも骨が折れる作業です。外注すればするほどディレクションと編集費が積み上がり、「内製で素材を作ったのに編集工程で想定外のコストと時間が発生してしまう」という本末転倒が起きます。

そこで必要になるのが、撮影・収録の前に「出口(最終アウトプットの型)」を決め切ることです。どの媒体で、どんな形式で、どう使われるのか。ここを先に確定し、収録の進行を“編集しなくても成立する形”に寄せていきます。

例えば、動画を主戦場にするなら、長尺動画や短尺クリップで最も重要なのは冒頭の強さです。収録前に「冒頭で結論→理由→全体の見取り図」を必ず話してもらうと決めておけば、冒頭の切り出しだけで拡散されやすい短尺素材が作れます。結果として、無駄な前置きを削るための編集や、並べ替えの工数が激減します。具体的な配信先がYouTube、TikTok、YouTube Shortsのように複数ある場合でも、最初に「使われ方」を揃えておけば、素材の再利用が一気に簡単になります。

一方で、SNSで要点を届けたいなら、収録の最後に「今の話を3点に要約してください」と必ず投げる設計にしておくと、投稿文や図解に転用しやすい“完成形の要約”がその場で手に入ります。これをXやLinkedIn、Facebook、Instagramへ横滑りさせる際も、編集側で無理やり要点を抽出する必要がなくなります。

さらにメルマガを主目的にするなら、「よくある質問→端的な回答」を収録に組み込むのが効果的です。テンポの良いQ&Aは、そのままリードナーチャリング用の連載として成立し、本文設計の負担を軽くします。

要するに、効率化の肝は「後で編集して形を作る」のではなく、「最初からそのまま使える形で話してもらう」ことです。出口から逆算して収録を設計すると、編集工数が減るだけでなく、媒体ごとの成果導線を最初から織り込めるようになります。

内製と外注の境界線を引く

出口逆算の設計ができても、すべてを内製しようとすると必ず回らなくなります。マーケ担当者のタスクは、コンテンツ以外にも効果測定、展示会準備、MA運用、インサイドセールスとの連携などで埋まりがちです。だからこそ「どこまでを社内で持ち、どこからを外部に渡すか」を最初に決めておく必要があります。

原則として、社内が担うべきは“コア”の部分です。具体的には、誰に向けて何を言うのかという企画と、収録で一次情報を取りに行く意思決定です。ここは事業理解と社内事情に根差すため、外部が代替しにくい領域です。

一方で、素材が揃った後の“タスク”は、プロに任せたほうが速く、安定します。スケジュール調整、ライターや編集者の選定、記事化、校正、複数媒体への整形、動画の切り抜きやテロップ制作などは、仕組み化と分業が効く領域です。ここを内製にこだわると、結局は担当者の空き時間がボトルネックになり、更新が止まって機会損失になります。

外注の際に意識したいのは、アウトプットが複数あるなら「ワンストップで揃う体制」を優先することです。記事はA社、動画はB社のように分けると、マーケ担当者のディレクション負荷が増え、媒体間でトーン&マナーがブレやすくなります。出口逆算の思想と相性が良いのは、最初に決めた“出口セット”に沿って、同じ理解のもとで量産できるパートナーです。

最小投資で最大露出をつくるシナリオ

ここからは、明日から動ける形に落とし込みます。ポイントは、いきなり完璧を目指さず、「勝ちやすい一次情報」と「固定した出口セット」から始めることです。そのうえで、収録は“編集しない前提”で設計し、素材を分解して各媒体の型に流し込み、最後に営業導線へ接続します。この順序で進めると、制作が積み上がるほど楽になります。

最初に決める素材は、社内に存在し、読者関心が高く、競合が真似しにくいものが向いています。典型例としては、既存顧客の成功事例、開発の裏側や意思決定の背景、トップセールスの商談を前に進めるロジックなどです。これらはストーリー性と再現性があり、ブログにもメルマガにもSNSにも転用しやすいものです。

次に出口セットを固定します。初手は3点で十分です。ブログ(長文解説)で検索と信頼を取り、SNS(要約・図解)で接触機会を増やし、メルマガ(Q&A)で関係を深めていく。この3つを先に決めると、収録で何を聞くべきかが自動的に決まります。ブログ用には背景と意思決定の理由を深掘りし、SNS用には要点の3点要約をその場で作り、メルマガ用には「検討段階で聞かれる質問」を一問一答で回収する。ここまでが出口逆算の現場運用です。

そして収録設計では、アジェンダとタイムテーブルを“編集しないために”作り込みます。冒頭でテーマと結論、次に課題、次に解決策、最後にQ&Aというように、時間配分ごとに話す内容を決めてファシリテーションする。こうすると、後から「つなぎ直す」「順番を入れ替える」「結論がないので作る」といった編集が要らなくなり、外注費も工数も下がります。

収録が終わったら、録画・録音データとアジェンダをセットで外部に渡し、出口セットの型に合わせてテキスト化・リライト・整形してもらいます。ここで依頼が曖昧だと、また編集地獄が始まります。だからこそ「この素材をブログ・SNS・メルマガの3形式に分解し、それぞれの完成形にしてください」と、出口から指示します。マーケ担当者は、数週間後に上がってきた原稿や動画を確認し、最終検収をするだけの状態を目指します。

最後に、配信で終わらせず営業導線に接続します。ブログの末尾には関連資料のダウンロードや無料相談への導線を置き、メルマガではクリックや反応をシグナルとしてインサイドセールスに渡せる形にします。一次情報は説得力が高いので、「読まれて終わり」ではなく「商談に進む理由」になりやすい。ここまで設計して初めて、露出の増加が案件化につながります。

あなたはプロのライターになる必要はない

マーケ担当者が目指すべきは、最新ツールを操る編集者や動画クリエイターになることではありません。本当の役割は、社内に眠る一次情報を見つけ、出口から逆算して型を作り、複数チャネルへ翻訳して届ける仕組みを構築することです。

何日もかけて作った記事が、1つのブログでしか使われず埋もれていく状態を断ち切る。これこそが最大のコスト削減であり、成果の最短ルートです。制作費を圧縮しながら露出機会を増やすことは、精神論ではなく「出口逆算」と「外注の使い方」で再現性を持って近づけます。

もし「頭では理解できても、社内で回る仕組みに落とすのが難しい」「外注先の選定や進行管理でつまずきそう」「記事と動画を別々に頼むと結局自分の手間が増える」と感じるなら、企画段階の壁打ちから記事制作、校正、動画編集までワンストップで担えるパートナーに相談するのも有効です。重要なのは、あなたが“制作の現場”に飲み込まれるのではなく、“収穫から配信、そして営業導線まで”を設計し続けられる状態を作ることです。