編集者がダメな社長挨拶を勝手に添削してみた(第一回)

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企業の公式ホームページには必ずといっていいほどある「代表者挨拶」や「社長メッセージ」。

しかし、よくよく読んでみると「どうにも残念」といったものから、中には「イタい」といったものまで頻繁に見受けられます。

今回は「読者に伝わるメッセージとは?」をテーマに、ツッコミどころ満載の事例を取り上げ、何がどうダメなのか、どこを改善するべきかを編集者目線で解説してみたいと思います。

 

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ダメな社長挨拶例

森ばっかり見て木を見てない!!某サービス業C社の場合

※特定を避けるため実際の文章を元に一部リライトしています。

2011年3月11日の東日本大震災により、多くの尊い命が失われたことに、深く哀悼の意を表し、被害にあわれた皆様に謹んでお見舞いを申し上げます。


未曽有の大惨事に見舞われた日本が、この国難を克服し再び発展していくために、弊社としましては、世界経済の動向を常に見据えながら経営努力し、若い力を存分に生かして、被災地の復興と支援、また日本経済の発展に寄与する所存です。

(中略)

米国の民間需要の堅調などから世界経済は回復傾向にあるものの、東日本大震災が我が国の経済に与えたダメージは計り知れないものであり、回復の兆しが見られた日本経済に再び試練を与える結果となってしまいました。
また、中国経済の減速と中東・北アフリカの政情不安がようやく軌道に乗りつつあると思われた先進国の景気回復の流れに棹さす恐れがないともいえない状況です。

(中略)

まだまだ若輩者な私どもではありますが、仕事で社会に貢献したいという情熱だけはどんな企業にも決して負けないものだと自負しております。
役不足な面もありますが21世紀のリーディングカンパニーとして、これからも常に挑戦し、力強く目標に向かって邁進してまいります。

ダメな社長挨拶解説

 

唐突に被災地への配慮を見せる冒頭部分

 

「2011年3月11日の東日本大震災により、多くの尊い命が失われたことに、深く哀悼の意を表し、被害にあわれた皆様に謹んでお見舞いを申し上げます。

未曽有の大惨事に見舞われた日本が、この国難を克服し再び発展していくために、弊社としましては、世界経済の動向を常に見据えながら経営努力し、若い力を存分に生かして、被災地の復興と支援、また日本経済の発展に寄与する所存です。」

何の脈絡もなく震災のお見舞いからはじまっていますが本当に震災に関わる業種なのかはさておき、一見すると日本を代表するような総合商社かメーカーのようなグローバル企業を思わせるスケールの大きな一文。

どんな大企業なのかと確認してみると、社員数わずか3名の零細企業。もちろん「夢は大きく」は決して悪いことではないのですが、伝え方を誤ると、逆に経営感覚の低さを露呈する結果になってしまいます。森(=世界)を見る前に、まずは地に足をつけて木を見ろ、木を!と言いたくなりますよね。

さらにスケール感は加速しコピペ文乱用の中盤部分

 

「米国の民間需要の堅調などから世界経済は回復傾向にあるものの、東日本大震災が我が国の経済に与えたダメージは計り知れないものであり、回復の兆しが見られた日本経済に再び試練を与える結果となってしまいました。
また、中国経済の減速と中東・北アフリカの政情不安がようやく軌道に乗りつつあると思われた先進国の景気回復の流れに棹さす恐れがないともいえない状況です。」

ネガティブ全開に唖然。あたかも「業績が悪くても仕方がない」と言い訳をしているかのようなこの手法、実は企業のIR(Investor Relations 投資家広報)のレポートでよく使う手法です。そう思って調べてみるとこの挨拶文、丸紅の2011年のIRレポートの社長メッセージからのほぼ丸ごと引用でした。

社長メッセージをコピペで済ますとは、と唖然とされる方も多いと思いますが、「ん? なんかこの流れ不自然だな。。」と思って検索にかけてみると、結構な割合でコピペだったりします。

 

また、「流れに棹さす」という部分。元の文章から表現を変えたのはよかったのですが残念ながら誤用です。

【流れに棹さす】
傾向に逆らって、勢いを失わせる行為をすること ・・・(誤)
傾向に乗って、勢いを増す行為をすること    ・・・(正)

間違えやすい用語ではありますが逆の意味になってしまうため、ここでは「水をさす」あたりがふさわしいでしょう。

まったく中身の無いメッセージの〆部分

 

「まだまだ若輩者な私どもではありますが、仕事で社会に貢献したいという情熱だけはどんな企業にも決して負けないものだと自負しております。
役不足な面もありますが21世紀のリーディングカンパニーとして、これからも常に挑戦し、力強く目標に向かって邁進してまいります。」   Celemony&Co.   代表 野田某 

ようやく最後にポジティブなメッセージに転じますが、恐ろしいほど具体性に欠ける内容です。挨拶文だけ読んでもこの会社は何を生業にしているのか、読者の皆さんにはまったく謎だったのではないでしょうか。

実はこの会社、葬儀屋さんなのです!!(社名は変更してあります)
もちろん、葬儀屋さんが21世紀のリーディングカンパニーだったとしても、なんら悪くはないのですが、具体的な業務や会社指針などが一切語られていないため、グローバルな視点よりも地元のつながりを大事にしようよ、とか、ご家族の気持ちに寄り添おうよ、とか余計なことまで心配したくなってしまいます。

また、これはケースバイケースかもしれませんが、震災の話題も避けたほうが賢明だったかもしれません。

それから、ここで出てきた役不足という言葉も残念ながら誤用です。
こちらも正しくは逆の意味であり、これまで散々スケール感を出して述べてきた事が全て朝飯前という内容になってしまいます。

【役不足】
与えられた役目に対して自分の力量が足りないこと ・・・(誤)
その人の力量に比べて与えられた役目が軽すぎること・・・(正)

一体何を伝えたいのかまるでわからない、「カラ元気」をアピールするだけの非常に残念なメッセージです。

まとめ

当たり前のことですが、既存のひな形にあてはめるだけでは、伝えたいことは伝わりません。

発信する側と受け取る側のコミュニケーションにおいて大切なことは、話題の時事性やスケールの大きさではなく「言いたいことがきちんと相手の心に届くメッセージになっているかどうか」。

相手の心に伝わり、心を動かすメッセージになっているかどうか、そうした視点から今一度、あなたの会社のWEBサイトのメッセージをチェックしてみませんか?